更新日: 2017年4月25日
佐藤天彦名人が将棋ソフト『ponanza』に敗れた。
その後に行われた記者会見でも、佐藤天彦名人は「将棋ソフトがもうプロを上回っている」ことを公式に認めた。
佐藤天彦名人は立派だったが、それまでの将棋プロの態度がひどすぎた。
電王戦が本格的に始まったのは2013年から
2013年に将棋プロと将棋ソフトの5人vs5ソフトの対決がスタートした。
将棋には順位戦というものがあり、下から[C2][C1][B2][B1][A]という風にクラスが分かれている。もちろんAクラスがトップである。
すでに2013年の電王戦にAクラスの将棋プロが出場していた。
将棋プロ5人のうち、第1局目に登場した人間以外、他の4人は将棋ソフトに敗れ去った (第4局目の将棋プロも内容は完全に負けていたが、対人間相手ではやらないような事をやり、ルール上引き分けに持ち込んだ)。
そして第5局目の棋士が当時現役のAクラスだった三浦弘行プロである。
三浦弘行プロと『GPS将棋』の戦い
三浦弘行プロは将棋ソフト『GPS将棋』と対局した。
三浦弘行プロのミスらしいミスも見当たらないまま、結果は将棋ソフト『GPS将棋』の圧勝。
その後、三浦弘行プロは相手ソフトの実力を素直に認め、「私はまだ『GPS将棋』の本当の力を引き出せていない」とまで語っていた。
その時の三浦弘行プロの回想等、棋士による書き下ろし自戦記は非常に読み応えがある。
今読むからこそ非常に価値のある内容になっているので、まだ読んだことのない人はぜひご一読いただきたい。
2014、2015年の電王戦
2014年の電王戦も将棋プロは1勝しか出来ず、これまた惨敗。
2015年は当時現役のAクラスだった阿久津主税プロが、禁断のハメ手をソフト相手に使ってしまった。
これには賛否両論あったが、対局自体を楽しみにしていた多くのファンはがっかりしたことだろう。
電王戦は、もう将棋の対局ではなく『ソフトのバグを探すゲーム』になり下がってしまった。
米長邦雄前会長が生きていたら、何と言っていただろうか。
新たに叡王戦が始まる
2015年から、叡王戦という棋戦がスタートした。
“叡王戦に優勝した将棋プロ”と”将棋ソフトの大会で優勝したソフト”が電王戦を戦う。
2015年の叡王戦の優勝者は山崎隆之プロ。
2016年に先手、後手を入れ替えた2局の電王戦が行われたが、2局とも将棋ソフト『ponanza』の圧勝だった。
2017年の将棋電王戦
そして今回の将棋電王戦である。
将棋の現役の名人である、佐藤天彦プロが登場ということで注目を集めていた。相手はponanza。
勝負は一方的だった。佐藤天彦名人が見せ場を作る事さえ許さず、将棋ソフト『ponanza』は圧勝した。
今までソフトとの対局に敗れるたびに言い訳をしてきた将棋プロだが、現役の名人がどんな言葉を発するか注目された。
しかし予想に反して会見は素晴らしいものとなった。
佐藤天彦名人は、素直に将棋ソフトの実力が将棋プロを超えていることを認めたのだ。
これはスポーツなどを見ていても思うことだが、トップの人間ほど相手をリスペクトすることが出来る。
逆に中途半端なレベルの者ほど、相手へのリスペクトを欠くことが多い。
最後に: 将棋プロはもう不要なのか?
将棋ソフト開発がどれだけ大変なのかは、少し想像すれば分かると思うが、大抵の将棋プロは開発者へのリスペクトなど全くなく、自らのちっぽけなプライドを守ることに必死だった。
しかし、GPS将棋に敗れ一切言い訳をしなかった三浦弘行プロや、今回の佐藤天彦名人など、魅力的な将棋プロがいることも事実。
そのような魅力的な将棋プロは、先ほども言ったように羽生善治プロをはじめ、トッププロに多くいる。
将棋プロは将棋しかしてこなかったので、ずれたプライドをもつ者も多いが、いまさら彼らの意識を変えることは出来ないだろう。
わざわざ情けない将棋プロを見てがっかりするのではなく、積極的に素晴らしい将棋プロを見るようにして、将棋の魅力を堪能していきたいものだ。
▼そして下記の本だが、羽生善治や渡辺明にロングインタビューを敢行しており、彼らの将棋ソフトに対する見解や、現時点での分析など、新しく知る内容が続々と出てくる。
あまりに面白すぎて一気に読んでしまった。
この本を読んで、羽生は「ソフトと戦いたいのかもしれない」と感じた。
果たして、羽生善治がソフトと戦う日は来るのだろうか。